第6話「バーンウイング」












月面都市「フォン・ブラウン」

半地球連邦政府、略して「エゥーゴ」の拠点とされた都市。



「失礼します。」

とある一室に、一人のエゥーゴの制服を着た男性が入ってきた。
部屋の端に設置された大き目のデスクには、独特的な制服に身を包んだ女性が座っている。

「先程、”ジャブローの風”作戦のためアーガマ隊とサラミス四隻が発進しました。」
「わかりました。それと、彼の方はなんていってるんですか?」

目の前の書類を片付けながら、落ち着いた感じで尋ねる。

「それが、やはり、届かなければどうしようもないと。」
「そう。・・・・・さすがに、そうですね。」
「その件に関してなんですが、先程確認されたそうです。」
「え!?」

落ち着いた表情が一転して、驚愕の表情に変わる。

「ここに向かっているのは確かですが、どうやら交戦中みたいで・・・・」
「援軍は、出せるんですが!?」
「それが、ほとんどで払っていて・・・」
「彼女はいるはずです。」

その言葉を聞き、今度は男の方が驚愕の表情になった。

「あの部隊を出すつもりですか!?」
「どの道このまま放っておけば撃沈されるかもしれません!」
「し、しかし・・・」

有無を言わす前に、デスクに内臓してあるコンソールの受話器を手にとり、ボタンを押していく。

「艦長、今すぐ出られますか?」
『中将殿!?エクスプロージョン以外はまだ整備中です。』
「あの一機さえあれば戦況は必ず変わります。すぐ出撃してください。」
『しかし、隊長の方には言ってあるんですか?』
「彼女ならすぐに状況が理解できます。すぐに出撃して下さい。」
『了解!』

コンソールの画面が切れると、今まで呆然としていた男に向き直る。

「すぐ彼に連絡を、例の物が届いたと!!」
「りょ、了解!」

我に返るとすぐ敬礼をして慌てて出て行った。
男が出て行くのを確認すると、女性は深くイスに座り直した。

「無事に戻ってきてくれましたね、祐一さん。」

無機質な天井を見ながら呟く。



















戦闘宙域から少し離れた場所。

そこには二隻の艦が留まっていた。

「味方の信号弾を確認。援軍を望むとのコトです。」
「な、あれだけのMSを持ってしても出来んのか。全く、ここで取り逃がす訳にもいかんからな。コロンブスに打電、残りのMSすべて出せとな!」
「了解。」

打電されるとす、ぐさまコロンブスの方からMSが発進された。





「落ちろ―――――――!!!」

真琴の放つ何発ものビームがクロスガンダムを襲う。

「当たってたまるか!」

輝羅は上昇して全て回避し、反撃にビームライフルを撃つ。
真琴はそれを、軽くかわす。

(一進一退の攻防。でも長期戦になるとこちらが不利だ。)

そうは思っても、真琴の攻撃のて一向に休まる気配もなく、また隙も無い。

不意に敵捕捉ののアラームがなった。
見ると複数のMSの光がこちらに向かってきている。



「増援?あんな数どこにとっておいたんだ?」

ハリアとカシムも同じく増援を確認していた。

『だがこれでこちらに有利に動くぞ。』
「動くかどうかはわからん。しかし何もしなければ動くものも動かん。気を抜かずに行くぞ。」

ハリアは通信を切ると、未だ決着は付かずやり合っている二機の方へ向かった。
カシムも同じ様に後についていく。






「いい加減、落ちろー!!」
「くっ、やられるかっ!!」

ビームサーベルをシールドで受け止めバルカンで牽制。
隙を突きビームサーベルを振り下ろすが回避される。
その隙にまたビームサーベルを振り下ろす。

先程からほとんどそれの繰り返しだった。
気が付けば、アフラマズダが肉眼で確認できるくらいのとこまで来ていた。

(射撃も避けられ、格闘も受け止められ、一方的に不利のままだ。)

輝羅は先程から焦りを隠せずにいる。

(当たるかどうか、やってみるしかない!)

右手に持っていたビームサーベルを左手に持ち替え、スロットル全開で接近する。

「ふん、気でも狂ったか!?」

真琴は軽く横にスライドしてかわす。
輝羅の振り下ろしたビームサーベルは真琴の後ろにあった岩を切り裂いた。
瞬時、腰にマウントされてあったビームライフルを取り真琴に向け、撃つ。

「わっ!」

命中ギリギリでかわす。

「ちぃ、これでもダメか!」
「随分とやってくれるじゃない!」

真琴はすぐさま右手のビームライフルを向け、撃つ。

「しまっ。」

輝羅が言い切る前にすでに手は動いていた。
持っていたビームサーベルを振り上げ、コクピットに命中するはずだったビームを切り払った。

「今、手が勝手に・・・。」
「何、今の・・・?
「(動きが止まっている)今のうちに!」

輝羅が再度ビームライフルを撃とうと構え、引き金を引くが、直後右のコンソールからアラームが鳴った。

「え、エネルギー切れ!?」

見るとエネルギーのメーターがゼロまで落ちていた。

「ガンダムの色が、変わった?」

真琴もガンダムの変化に気が付いた。
トリコロールカラーの機体が灰色に変わり、ビームサーベルの刃も消え、ビームライフルを構えたまま動かなくなった。

「は、ははは・・・・所詮はガンダムと言っても、エネルギーが切れればウドの棒ね。」
『それを言うなら”木偶の棒”だろ。』
『ま、そんなとこが隊長らしいけどな。』

ハリアとカシムのハイザックが近づいてきた。

『で、どうするんですか、隊長?』
「決まってるわ、もちろん消すわよ。こいつはロッシの仇なんだから。」

そういってビームライフルのマガジンを取り替える。

『やれやれ、捕獲と言う案はどこへ消えたのやら。』
「そんなもの最初から無いわよ。それよりこんなとこで油売ってるなら、早くあの艦落として来い!また何かされたら迷惑だ!」
『りょーかい。』

通信が切れカシムとハリアは共にアフラマズダへ向かった。
ハリアが合図を送ると周辺にいた機体も共に付いていった。

「アフラマズダに向かってる。なんとかならないか?」
(推進剤が少しだけあるが、相手が相手。逃げ切れるはずが無い。けどこのままだとみんなが!)

どれだけ考えを巡らせても打開策は思いつかない。

「さて、こいつも早いとこ落としとかないと。何かされても困るしね。」

そう言ってビームライフルをクロスガンダムに向ける。

(もう、だめだ!!)
「死ねっ!!!」

真琴がトリガーを引こうとした瞬間、二條の粒子が真琴目掛けて放たれた。
真琴は間一髪で回避する。
その方向から一機のMSが向かってきた。

「なに、あのMSは!?」

トリコロールカラーに赤いウイングを纏った機体は、ビームサーベルを抜き、まっすぐと真琴のほうへ向かう。

「上等じゃないの。邪魔してくれたお礼よ!」

真琴も同じ様にビームサーベルを抜く。
二機が交差した瞬間、マラサイのビームサーベルを持った腕が斬り飛ばされた。

「な!?」

マラサイから離れるとそのまま旋回し、アフラマズダ周辺にいた機体も、同じように腕や頭部を斬り飛ばしていく。

「あのMS、一体?」
『輝羅君!』

不意に通信が入る。

「み、美由!」
『援軍だよ。3時の方向。』

3時の方には、今まで見たこともない(おそらく他でもお目にかかれない)艦の姿があった。

「見たこと無い艦だ。」
『私も見たことないけど噂位なら。』
「え?」
『バーンウイング隊、母艦『アークエンジェル』。エゥーゴでも特別な隊だよ。それより今から川澄中尉が換装用のパーツを持っていくので、受け取ってください。』
「え、あ、了解。」

通信が切れると入れ代わりに舞から通信が入る。

『輝羅!』
「舞中尉!」

舞のジムUはやはり左腕がなかったが、右腕でしっかりパーツを持っていた。

『すぐに渡す。やり方は覚えてると思うから。』
「大丈夫です!」

返事を返し通信が切れると、ジムUからパーツが投げられた。


エールパックをパージして、万が一の場合に積まれていた推進剤を使い、パーツを受け取るとすぐ両肩と背部に装着した。

「装着完了、各部異常なし、エネルギー供給、PS装甲展開!」

再びトリコロールカラーへと変わっていく。
即座に周囲を確認すると、舞のジムUがガルバルディβと交戦していた。

『っ、輝羅!』

不意に舞から通信が入る。

『背中の剣を!早く!』
「りょ、了解!」

バックパックのレーザー対艦刀『ストームブリンガー』を取り投げ渡す。
受け取った舞はすぐ構えビームの刃を展開させると、ガルバルディβを一刀両断した。
さらに同じ勢いで他の敵も斬り捨てていく。

「すごい・・・・・・普通の動きじゃない。」

呆気に取られている時、後ろから敵機接近のアラームが鳴った。
真琴のマラサイがビームサーベルを持ち、こちらに向かってきている。

「どいつもこいつも、私をコケにして〜・・・・・あんただけでも殺す!!」

「マラサイ、まだ生きてたか!」

もう一本のストームブリンガーを抜き、マラサイに向かう。

「死ねえええええええええぇえぇぇぇぇぇえぇえええぇ!!!!!」
「うあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

ビームサーベルが振り下ろされる前、ストームブリンガーが横に振り払われ、マラサイの右腕と頭部を切り裂いた。

「もう一発!」

今度は振り上げるように構え、振り下ろし右肩と右足を切り裂く。

「トドメェェェ!!」

胴体を狙い再度構えるが、ミサイルが接近しているのに気付き、反転してミサイルを斬り払っていく。

「簡単に隊長はやらせねぇよ。ハリア。」
『ああ。』

輝羅が気を取られている隙に、ハリアのハイザックがマラサイを連れて行く。

「逃すか!!」

肩アーマーからビームブーメランを抜き、離れていくハイザックにむかって投げるが、カシムのビームライフルによって撃ち落された。

「邪魔をさせるか!」
「ちぃ!」

ハイザックに向き直ると、すでにヒートホークを抜き向かってきていた。
ハイザックの振り下ろされたヒートホークを輝羅はストームブリンガーで受け止める。
刃の構成の違いのせいか、ヒートホークは切り結んでいた部分が斬り裂かれ、本来当たる刃がなくなったため、クロスガンダムの前を空振りした。

「バカな、こうも簡単にっ・・・!」
「もう一発!」

ストームブリンガーを横に薙ぎ払う。
ハイザックは上昇し、コクピットの直撃だけは避けたものの、下半身が切り裂かれた。

「駄目だ、ここまでか!?」

クロスガンダムがまたストームブリンガーを振り上げ構える。

「終わりだ!」

振り下ろされる瞬間、クロスガンダムの背部にミサイルが命中した。

「悪いがそいつも大事な仲間なんでね!」
「もう一機のハイザックか!?」

他の機体に任せたのか、真琴のマラサイは抱えておらず、ビームライフルを構えていた。

「実弾がきかなくったってなぁ、怯ませるくらいなら!」

ロクなロックオンもせず我武者羅にミサイルを放つ。
輝羅は当たる直前に切り払っていく。
最後のミサイルを切り払うが、正面にハイザックの姿は無く、後部のハイザックの姿も無くなっていた。

「撤退・・・・した?」

周囲からも敵機の反応は無く、輝羅はため息を吐いた。

『輝羅。』
「・・・・・・はい。」

少し遅れて返事をする。

『周囲からはもう敵機の反応はない。全て撤退したみたい。』
「みたい、ですね。あ」

気が付けば、再びエネルギー切れのアラームが鳴っていた。
トリコロールカラーがたちまち灰色へと変わっていく。

『やはり、その機体もPS装甲なんですね。やっと届きましたか。』

不意にもう一つ通信が入る。
気が付けば、左記程の赤いウイングの機体だった。

「あ、あの。」
『助かりました、天翔少佐。』
「え、少佐?」

どう聞いても女性二人の声しか聞こえないため、輝羅は困惑している。
不意に一つのコンソールが起動した。
全天候リニアシートにパイロットスーツを着た人しか映っていない。
おもむろにヘルメットをはずした。
黒いロングに美人の一言しかつかない顔立ちがあった。

『申し遅れましたね。私はバーンウイング隊総隊長、天翔翼です』

「え、た、隊長?」

























アフラマズダ 月、到着


























機体解説


名称:ソードクロスガンダム
型式番号:RXHJ−105S
武装:対艦刀「ストームブリンガー」×2
   ビームブーメラン×2
   ビームライフル
   60mmバルカン×2
   アーマーシュナイダー×2

その他機能:PS装甲
      シールド装備


備考 クロスガンダムの装備の一つで、近距離格闘に特化した設計がされている。
両肩のビームブーメランは少し大型のビームナイフとしても使用可能。
ビームライフルも使用可能なため、相手の意表をつくことが出来る。
もっともエネルギー消費が少ないが、搭載されている予備のバッテリーの容量も少ない。
設計者の趣味によりこれにも別名がつけられた。






名称:ジムU(舞専用)
型式番号:RGM−79R
武装:ビームライフル
   ビームサーベル
   60mmバルカン×2

その多機能:シールド装備


備考
舞専用にチューンされたジムU
外観は変化が無いが、格闘戦に特化してチューンされている。






名称:ガンダムエクスプロージョン

型式番号:RXHJ−GE01
武装:ビームサーベル×2
   二連装ビーム砲
   長距離レールガン×2
   収束プラズマ粒子砲×2

その他機能:PS装甲
      シールド装備
      飛行可能


備考
HJ社のオリジナルで「エクスプロード・シリーズ」の一号機で、射撃重視で設計されている。
しかし、二対のウイングバインダーのおかげで機動性も高く、大気圏内の単体での飛行が可能になった。
かなりの電力を消費するため、バッテリーではなく通常のMSと同じ核融合炉を使用している。
不安定なためいつ暴走するかわからないが、バッテリー切れの心配も無くなり、すべての武装に電力が供給され威力にも信頼が置けるようになった。















あとがき


書き始めると結構早く仕上がりました。

その一言に限ります。





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