第5話「恨みと怒りと」












「艦長、補給作業間もなく終了します。」
「・・・・・・・・・・・・・・」

アレキサンドリア、艦長室。
そこにはふんぞり返ってイスに座る艦長と、少しオドオドしているオペレーターの女性がいた。
戦闘終了後、丁度来たコロンブスから補給と修理をうけた。
そのリストを艦長に届けに来たところだった。

「あの・・・・・・・・・・・・補給のリスト・・・・・・・・・・」
「そこの机にでも置いとけ!!」
「は、はい!」

艦長の怒鳴り声に驚き、オペレーターの女性は慌てて近くの机にリストを置いた。

「まったく、こんなことで時間を掛けるとは・・・・・・・・・貴様もよくこんなことをやっていられるな。」
「いえ、仕事ですから・・・・・」

彼女の弱々しい返事に、艦長は腕を組みなおす。

「それより、沢渡中尉の方だが・・・・・・・・使えるのか?」
「あ、はい。調整には時間が掛かったみたいですが、次の戦闘には間に合うと言ってました。」
「ふん。上層部はあんな使えない強化人間なんて送ってきて・・・・・・・どの程度かと思えば、MS一機も落せずに。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ん?他に用が無ければさっさと行け!!」
「は、はい!」

怒鳴り声に驚き、さっさと出て行った。

「ふん。」

ただ一人、残った艦長は外を眺めるだけだった。









NSデッキ 休息室
カシムとハリアは休息室にてMSデッキを眺めていた。
休息室はMSデッキと面しているため、デッキ内が一望できる。

「しかし、今回は派手にやられたな。」
「ああ。ハイザック一機やられただけでも大目玉だからな、あの艦長は。」
「もっとも、乗ってた奴も隊長が特に懐いてた奴だからな。」
「・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」

二人の間に沈黙が訪れた。

「・・・・・・・・・・・・・・・今回はコロンブスも参加するんだろ?」
「ん?ああ。だがコロンブス程度では戦力にならんからな。」
「いい気なもんだぜ、まったく。」
「・・・・・・・・・・・・先程、耳に入っちまった話だが・・・」
「あ?」
「隊長、次の戦闘で実績が出なければまた研究所に戻されるらしい。」
「な!?じゃ、じゃあ俺達はどうすりゃいいんだよ!」
「そこまではわからん。だがおそらくは、解散だろうな。」
「解散って・・・」

不意にドアが開き、真琴が入ってきた。

「・・・・・隊長」
「・・・・・・・・・行くよ。」
「え?」
「今度こそガンダムを落とす、早く準備しろ!」
「りょ、了解。」

真琴の声に驚いたのか、二人は慌てて敬礼し、エレベーターで降りていった。

「なんなんだよ、まったく。」
(普段の様子じゃないな。やはりあのことか・・・・・)









アフラマズダ ブリッジ
「ん?・・・か、艦長。敵艦補足しました。」
「早いな。・・・・・・・・よし、第一戦闘配備。出撃のタイミングはこちらで出す。」
「了解。」

第一戦闘配備のアナウンスはすぐ艦内に入った。
輝羅も放送を聞くとすぐに部屋を出て、更衣室に向かった。
中ではすでに舞が着替え終え、イスに座っていた。
輝羅は舞がいることに少し驚いたがすぐに着替え始めた。
着替え終わっても、舞は微動だにしなかった。

「あの、舞中尉・・・?」
「わかってる。月まであと少しだから、落とされないために少しでも集中力を高めたいから。」
「はぁ、わかりました。先、MSデッキの方に降りてますね。」

そう言って更衣室を出てMSデッキへ降りた。


MSデッキではすでにクロスガンダムが、スタンバイされていた。

(集中力向上のための精神統一か・・・・・)

そう思うと、輝羅は深呼吸をして、目を閉じた。








アレキサンドリア ブリッジ

アレキサンドリアの方も、すでにアフラマズダを捕らえきっていた。

「そろそろ頃合だな。コロンブスの方は?」
「全機、発進準備してます。」

オペレーターんー返事を聞き、艦長は一段と気を引き締める。

「よし、MS部隊発進!」

艦長の言葉の後、少しして漆黒の宇宙に幾数のMSが閃光を残していった。










「敵MSの発進を確認!」
「な、早すぎだろ。数は?」
「敵艦、2。MS・・・・・・4・5・・・・・な、七機です!」
「随分な数だな。ミノフスキー粒子散布。後部主砲及びメガ粒子砲用意。」
「クロス、ジムU、両機とも発進準備完了しています。ただカタパルトに異常が見つかったらしく急ピッチで修理が行われてます。」
「ふむ、急がせろよ、取り付かれてからでは遅いのだからな。突貫だが作戦内容だ。援護射撃で敵を散らした後、クロスで一機ずつ潰していく。川澄中尉は甲板でクロスが逃した敵を落とすように伝えろ。」
「了解。」



MSデッキはカタパルト修理に大忙しだった。

『輝羅君、調子はどう?』
「うん、大丈夫だよ。」
『そっか。それはそうと今回の作戦なんだけど、敵MSは計7機。結構多いから艦の援護射撃で散らした後、輝羅君げ一機ずつ落としていこう。ってのが今回の作戦内容です。』
「了解、でも随分と突貫だね。所で、舞中尉は?ジムUの方はまだ左腕の破損が直ってなかったような・・・。」

確かに、満足な補給も無くコロニーを出たアフラマズダはクロスのパーツは十分にあっても、それ以外のMSのパーツは満足には無かった。

『はい。ですから、川澄中尉には艦の上で輝羅君が打ち損ねた敵を落としてもらいます。』
『結構難しい。』
「大丈夫ですよ。舞中尉ならできますって。」
『・・・・・・・・・・・・・輝羅が打ち漏らさなければこっちの負担も減るから。』
「あ、僕次第ですか。」

激励を送ったつもりが、逆に突っ込まれてしまった。

『あ、カタパルトの修理が終わったみたいです。それと今回もエールパックで出てもらいます。』
「了解。」

通信が切れエールパックの装着が終了すると、クロスはカタパルト上に移動させられた。

「やらなきゃ、みんながやられる。進堂輝羅、クロスガンダム、行きます!」

輝羅の声と共にクロスは射出された。






クロスの発進は真琴たちの方からも確認できた。

「一機のみ?もう一機はどうした?」
『まさか、罠か?』
「いや、その確率はないと思うが・・・・・」

そんな会話をしている中、MS群の中から一機、物凄い勢いで飛び出して行く機体があった。

真琴のマラサイである。

「ガンダム、ガンダムゥゥゥゥゥゥ!!!!」
『な、おい、隊長!どうすんだよ、隊長行っちまったぞ!』
「・・・・・・・・・・・・仕方ない。ガンダムは隊長に任せよう。俺達はアーガマ級を落とすぞ。」
『大丈夫なのか?前回あんなにズタボロにされたのに。』
「とは言っても、俺達が言った所でたかが知れている。今、俺達にできることは、少しでも隊長の戦いやすい場を作ることだ。」

ハリアの言葉に呆れたのか、カシムはため息をついた。

『まぁ、お前がそう言うんならしょうがないな。今のとこ、隊長と付き合いが長いのは、お前だけだもんな。』
「そう言うことだ。行くぞ!」

ハリアのハイザックに続いて、後方のMSも一気に加速しだした。









「!?一機だけ突っ込んでくる!?」

MS群の中から一機だけ離れた真琴のマラサイは、輝羅の方でも確認できた。

「他のは全部アフラマズダに行くってゆうのか。」
「ガンダム、落ちろ――――――――!!」
「くっ!」

自分目掛けて飛んでくるいくつものビームをシールドで防ぎながら、ビームライフルで反撃する。
真琴は機体を横に逸らして回避した。

「かわされた!」
「甘いわよ!」

二丁のビームライフルによる時間差攻撃により、輝羅は除々に追い詰められていった。

「このままだと、アフラマズダが・・・!」

敵MS群はまだ遠いものの、このままではすぐに取り付かれてしまうのは目に見えていた。

(今、この状況を打開するには・・・)

輝羅はマラサイに向き直ると、ビームライフルを構えた。

(落とさなくてもいい。隙さえ作れれば!)
「やらせないわよ、そう簡単には!」
「っ、ダメだ!」

構えても真琴が阻止するため、中々反撃できないでいる。

「隙ができない。(けど向こうはまったく前に出ようとしてない。)それなら!」

輝羅はシールドを前に構え一気に加速しだした。

「何、突っ込んでくる!?」

真琴はビームライフルを駆使しながら後退するが、何分向きが逆向きなので本来のスピードは出ず、すぐに追いつかれてしまった。
真琴の間近まで迫ると、輝羅は収納し小型化したシールドをマラサイの頭部目掛けて殴りかかった。

「このー!」
「当たるか!」

機体を後ろに逸らして回避するが、シールドが急に展開しマラサイの頭部に命中した。

「ああ!・・・・・・・うう、この、やったわね!!」

AMBACで体勢を整えてビームライフルを構え直すと、それより早く輝羅は構え直していた。

「っ!?」
「・・・・・・・」

動揺した真琴より早く発射されたビームの閃光はマラサイのビームライフルを貫いた。

「っ、くっ。」

ビームライフルの爆発が収まると、クロスの蹴りが入った。

「っ、ああっ!」
「よし、今のうちに。」

輝羅はすぐ反転すると、アフラマズダに向かうMS群へ向かっていった。









アフラマズダ ブリッジ

「あと数分で敵MS部隊射程距離に入ります。」
「クロスはどうした?」
「敵MS部隊に向かっています、こちらもあと数分で接触します。」
「やっと来たか。これより援護射撃を行う、後部主砲及びメガ粒子砲用意。いいか、あくまで当てようと思うな、散開させればいいからな。」
「後部主砲、発射準備完了しました。」
「よし。全弾、撃てぇ――――!!!」

ミアからの報告を受け祐一が合図を下すと、アフラマズダの後部主砲とメガ粒子砲からMS群へ向け、閃光が発射された。










「ん、光?」
「まずい、全機散開しろ!」

ハリアの通信で各々回避行動をとった。
すると先ほどまで集まっていた辺りに三つの閃光が通過していった。

「危なかったな。被害は?」
『バカな奴が一機、巻き添え食らったみたいだぞ。』
「一機か、早いとこ他の機体を集めないとな。」

ハリアは合図を送って、機体に集合を促した。

「なんだ、光が・・・・」

ガルバルディβのパイロットが光を見つけたが、そこから発せられたもうひとつの光が命中し爆散した。

「なに、一体どこから!?」

ハリアがあわてて周囲を確認すると、先程まで光だけだったクロスがぼんやりと形がわかる位の距離に迫っていた。

「あの距離から当てたのか!?ちっ、全機散開!ガンダムを落とすぞ。」

そういって無線を切ると各々クロスへ向かっていった。

『隊長、落とされたのか?』
「わからん。まだ落とされてなければ絶対にくるはずだ。それまで持ちこたえるぞ!」

カシムとの無線も切ると、ハリアもクロスの方へ向かっていった。









「くっ、もう二機来た!?」

二機だけでも不利を感じはじめていた輝羅だが、更なる増援に焦りが高まり始めた。

(エネルギーも残り3分の2。早く落とさないと。)

しかし焦りからか、どうしてもはずしがちになってしまう。
そう考えているうちに、ガルバルディβのシールドミサイルが背部に命中した。
幸いPS装甲で本体は無事だったものの、PS装甲ではないパックパックのスラスターが一つ、破損した。

「しまった!」

バランスを崩した際にハイザックがビームサーベルで切りかかってきたが、かろうじてシールドで受け止めた。

「ふん、やるな!」
「これくらいで!」

輝羅はハイザックが離れる前に、ビームライフルをラッチして、ビームサーベルを抜き切るが、軽く避けられてしまった。

「甘いぞ!」
「ちぃ!」
「ほらほら、どっち向いてんだよ!」

立て続けにカシムのハイザックがビームライフルを撃ってきたが、かろうじてシールドで防御した。

「どっちを向いてる!」
「もう一機!?」

ハリアのハイザックがビームサーベルを構え接近してきた。

「もらった!」
「やられるか!」

右手に持っていたビームサーベルで振り下ろされたビームサーベルをかろうじて切り結んだ。

「こっちもいるぜー!」
「もう一機も!?」

カシムはヒートホークを振り上げ迫っていた。
こちらシールドで受け止めた。

「なかなかやるようだが、まだ未熟だ。」
「・・・・っ、!!」

前を向くと、ビームライフルを構えたガルバルディβの姿があった。
輝羅が“死ぬ”と認識した瞬間、一條の閃光がガルバルディβの半身を奪っていった。 機体の60%以上を失ったガルバルディβはそのまま爆散し、宇宙の塵となった。

「何だ、今の・・・」
「・・・・・っ、今のうちに!」

一足先に我に帰った輝羅は切り結んでいるハリアのハイザックを蹴り飛ばした。

「うおっ!」
「ハリア!この野郎!」

カシムがヒートホークをシールドから離し、もう一度振り上げるがそれより早くクロスの回し蹴りが胴体にヒットした。

「こいつ、やるな!」

体勢を立て直したハリアがビームライフルに持ち替え、狙いをつける。
スコープを覗いたハリアに見えたのは、クロスに格闘戦を持ち込んだジムクゥエルだった。

「あいつ、余計な事を。」


何度も刃を交えるがどうみてもクロスの方に分があった。

「くそ、なんで!」
「そこぉ!」

クロスの突きがクゥエルの動力部を貫き、爆散した。

「ちっ、勝負を早まるから。」

冷静にスコープを見て狙いをつけるハリア。

一方、クロスの方は連続の格闘戦で息が上がっていた。

(エネルギーも残り四分の一。無駄に動きすぎた。)

息を整えるためその場に静止するクロス。だがそれが仇になった。

不意にクロスの後ろから、三本のビームが機体を掠める。

「まさか、追いついた!?」

振り向くと、一機のマラサイがこっちに突っ込んできていた。

「真琴をコケにして〜、ガンダム、絶対に許さない!」
「くっ、こんな時に!」

輝羅はビームサーベル構え直す。
真琴も左腕でビームサーベルを抜く。

暗い宇宙に閃光が生まれる。


















アフラマズダ 月到着まであと 二時間












機体解説


名称:エールクロスガンダム
型式番号:RXHJ−105A
武装:アーマーシュナイダー×2
   60mmバルカン×2
   ビームライフル
   ビームサーベル×2


その他機能:シールド装備
      PS装甲



備考
クロスガンダムの装備の一つで主に高機動戦を目的とされる。
どの装備よりも速く動けるが、その分エネルギー消費量も多い。
武装は平均的。






名称:真琴専用マラサイ
型式番号:RMS−108
武装:ビームライフル×2
   60mmバルカン×2
   ビームサーベル×2



備考
真琴専用にチューンされたマラサイ。
ビームライフルを完全なカートリッジ式にして、稼動時間の増加を図った。
左肩に狐の絵がマーキングされている。











あとがきです。


年末近くで焦っていたのか、できは悪い方だと思います。


何がともあれ次回オリ部隊登場させます。




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