第4話「サイレントフォース」












アフラマズダ ブリッジ

「やはり、来たか」

サイド5を出発してから早3日。
アフラマズダの方もアレキサンドリアを捕捉していた。

「振り切れそうか?」
「無理、だと思います。最低でも2回は交戦すると思います」

祐一の問いにオペレーターの人は戸惑いながらも答えた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうしますか?」
「避けられないなら仕方ない。MS2機ともスタンバイ。第一戦闘配備!」
「了解!」



輝羅 自室
日頃のMSのシミュレーション疲れを癒すため睡眠をとっていた輝羅は第二戦闘配備のアナウンスで目を覚ました。

「え?第一戦闘配備!?」

輝羅はすぐに服装を整え、更衣室に向かった。
「月までもうすぐなのに、こんなタイミングで」

ノーマルスーツに着替え終わるとすぐ格納庫に向かった。

格納庫ではすでにクロスの準備ができていた。

「お、輝羅か。いつでも出られるぞ」
「ありがとうございます」


キィィィィィン


「!?」

コックピットに入ると同時に戦慄に似たものが、輝羅の脳裏をよぎった。

(この感じ・・・・・・・・・・一体・・・?)





アフラマズダ ブリッジ

キィィィィィン




(!・・・なんだ・・・・・この感じ)

同じ頃、ブリッジでは祐一も同じものを感じていた。

「艦長!!」
「あ、ああ、敵との距離は?」
「およそ、6千です」
「・・・・・・・・・・・・・敵出撃を確認したら、味方MSを展開。あくまで時間稼ぎだと伝えておけ」
「了解」
(今の感じ・・・・・・・・・・俺は・・・・・・・・・・・知っている?)

そしてもう一人、輝羅や祐一が感じているものと同じものを感じている人が一人・・・・
(何、この感じ!?・・・ザラッとした、嫌な感じ・・・・・・輝羅君・・・・・・怖いよ!)


アレキサンドリア ブリッジ


キィィィィィン




「!!」

アレキサンドリアのブリッジで真琴も同じものを感じていた。

(この感じ、なに!?)
「沢渡中尉」
「え?あ、な、何?」
「MS発進準備だ。早くMSデッキに行ったらどうだ?」

艦長の小バカにした嘲笑を真琴に向け浮かべた。
真琴は一瞬カチンと来たが、なんとかこらえいつもの余裕の顔を保った。

「わかったわ。後はよろしくね」
「中尉こそ墜されるなよ。そうなればこっちが上から大目玉なのだからな」

まだ嘲笑い続ける艦長に今度こそ切れかけたが、真琴は何とか堪えた。

「っ、そんなヘマしないわよ」

真琴はブリッジを出てMSデッキへ向かった。
途中、隊員の一人とはち合った。

「また艦長に何か言われたんですか?」
「別に。ロッシには関係ないでしょ」
「あんな艦長の言うこといちいち気にしてたら、身が持ちませんよ?」
「わかってる。心配してくれてありがと」
「どういたしまして」

真琴が恥ずかしそうに礼を言うと、ロッシは笑顔で返した。

MSデッキに降りると、マラサイが一機、ハイザックが三機並んでいた。
真琴は自分のマラサイのコックピットに入ると、すぐ機体を起動させた。

「いい?敵は新型とジムUのみ。新型は私が抑えるから3人でジムUを墜として、すぐに艦を墜とす。艦さえ沈めれば、あとは新型を持って帰るだけ。そうすれば真琴達は大手柄よ」
『『『了解』』』
MSデッキの扉が開き、カタパルトの先には漆黒に宇宙が広がる。

「ロッシ、ハリア、カシム、いいわね!?フォックス隊、出るわよ!」

真琴のマラサイが勢い良く射出された。
それに続いて、三機のハイザックも次々に出撃した。






アフラマズダ ブリッジ

「MSの出撃を確認!」
「ついに来たな。こちらもMS隊出撃!メガ粒子砲及び後部主砲も用意!」
「MS隊出撃。輝羅君、頑張ってね」
『うん。進堂輝羅、クロスガンダム、行きます!』

輝羅の声と同時に右側のカタパルトから、クロスガンダムが出撃した。

「舞中尉も、頑張ってください」
『はちみつくまさん、舞、ジムU、出る!』

反対側のカタパルトからは舞のジムUが発進した。
二機は少し進んでから、すぐにUターンし向かって行った。





「出て来たわね〜、各機散開!」
『『『了解』』』

真琴の合図と共に、各々分かれていった。


「(左右に分かれた。)舞さん!」
『わかってる。私が右に行く。』
「え、でも相手は三機ですよ?」
『でも一機でくるという事は絶対にエース機。それに多人数相手なら慣れてる。』
「・・・・・・・・・わかりました。絶対に無茶だけはしないでください。」
『大丈夫、早々墜ちないから。』
「こっちが片付き次第、援護に向かいます。」
『お願い。』

舞の返事を最後に通信が切れ、こちらも二手に分かれた。


『お、こちらはジムU一機か?随分な自信家だな。』
『みたいですね。』
「ここは俺達で引き止める。ロッシはアーガマ級へ向かえ。」
『了解。』

ハリアのハイザックは舞のジムUが射程内に入るとビームライフルを連射してきた。
舞はシールドで防ぎつつビームライフルで応戦していった。

「おいおい、俺も忘れてもらっちゃ困るぜ?」

もう一機―――カシムのハイザックがビームサーベルを抜いて切りかかってきた。
舞は間一髪隙を見つけてシールドで防いだがその隙にもう一機―――ロッシのハイザックが通り抜けて行った。

「しまった!艦が・・・・・」
「おっと、逃がさないぞ。」

すぐに反転しようとしたが、カシムのハイザックに阻まれてしまった。

「そうすぐには墜とさねぇよ。たっぷり可愛がってやる。」
「くっ!」




ハイザックが一機、アフラマズダに向かったのは輝羅の方からも確認できた。

「一機、抜けられた!?」
「ほらぁ、どっち見てんのよう!」
「うぁっ!」

余所見をした輝羅に真琴は容赦無くショルダータックルを食らわせてきた。

「く、そ、負けるかぁ!」

体勢を立て直すと反撃とばかりにビームライフルを撃つが、軽く回避されてしまった。

「性能差はあっても、パイロットがその程度なら!」

真琴はすぐ両手のビームライフルを構え、計6発発射した。
輝羅は右に避けながらビームライフルで反撃するが、真琴は上昇して回避した。
後を追うように輝羅も上昇する。

「そんな戦い方じゃぁ、ただの的よ!」

真琴は照準を合わせ、右手のビームライフルを3発発射した。

(避けるより防御!)

シールドで受け止めながら、ビームライフルで反撃する。
真琴は左手のビームライフルを構えるのを止め、右に回避した。

「ふ〜ん、なかなかやるじゃないの。」

間髪いれずに二丁のビームライフルを時間差で撃ってくる。
輝羅はシールドで防御しながら反撃するが、軽々と避けられてしまう。

(がむしゃらに撃ってもだめだ。相手の動きをよく見ないと。)

そう思うと、集中してスコープを覗きながら相手を追った。

(・・!・・見える)

集中しだすと急に輝羅の脳裏にビジョンが見え出した。

(・・・・・・・・・敵の動きが・・・・・・見える!)

彼の脳裏に映ったのは、間違いなく真琴の次の動きだった。
輝羅はすぐ銃口を修正し、発射した。

「!、直撃!?」

すぐに回避運動を取ったが、輝羅の撃ったビームは左手のビームライフルに当たった。

「っ!、やってくれるじゃない!」

爆発する前に左手のビームライフルを捨て、代わりにビームサーベルを抜いて接近してきた。

「でも、調子に乗るんじゃないわよぅ!!」
「なんだ、プレッシャー!?」

横払いの攻撃をシールドで受け止めると同時に真琴のマラサイから回し蹴りが入った。

「うわっ!」

すぐにAMBACで体勢を直し、ビームライフルをラッチするとビームサーベルを抜き、真琴に向かって加速した。

「ここでやられてたまるかー!!」
「なに、この感じ!?」

近くまで接近するとビームサーベルを振り下ろすが、間一髪で回避された。

「さっきの嫌な感じはお前かー!!!」
「この感じ、さっきのか!?」

互いのビームの刃が交じり、漆黒の宇宙に閃光を描いていく。





アフラマズダ ブリッジ
「MS一機接近!」
「抜かれたか!?対空機関砲用意、弾幕を張れ!敵を近づかせるな!」

祐一の合図で、一気に機関砲が発射され始める。

「いくら対空機関砲があっても、数が少なければ。」

確かに1番艦にも搭載されたものの数は多くなく、そのことはこのアフラマズダも同じだった。
たが数が少ないだけに、追尾性や威力も高いものとなっているため、ハイザックも容易には近づけない。

「っ、追尾性が高い、迂闊には近づけないな。」

ロッシは一度距離をとると、腰部のミサイルランチャーから3発ミサイルを発射したが、どれもあっさりと打ち落とされた。

「実弾もだめか。」

がむしゃらにビームライフルを打ち続けると、運よく後部の機関砲に命中した。

「当たった!?今がチャンスか。」

機関砲の雨の隙間から、艦に取り付いた。


「9番の砲座の撃破を確認!」
「な、この状態からよく当てた。アンチビーム爆雷装填。輝羅と舞に戻るように伝えろ。」
「しかし、ここで回線を開いたら敵に傍受される恐れが・・・・」
「この状態で味方を呼び戻さなきゃならなくなるのは相手にだって予想できる!どちらにせよ早くしなければこちらが沈むだけだ!」
「りょ、了解!輝羅君、舞中尉、すぐにアフラマズダに戻ってください。」
『了解!ただ撒くまで時間がかかりそうです!』
『もうすぐで振り切れそう。』

美由からの通信に各々答えると、すぐに通信は切れた。


「くそっ、振り切れるか!?」
「なによぅ、にげる気!?」

反転してアフラマズダに向かった輝羅に、真琴がビームライフルを連射するが、機体を横に逸らして回避した。

「絶対に逃がさないわよ!気持ち悪いやつ!」
「やめろ、邪魔をするなっ!」

輝羅はマラサイに向き直り、振り下ろされたビームサーベルをシールドで受け止めた。

「くうぅ!」
「どうしたの、防戦一方よ!?」

ビームサーベルを弾き一旦距離を置こうとするが、またビームサーベルを振り上げ切りかかってきた。

「これで終わりよ!」
「やられる!?」

ビームサーベルが振り下ろされる寸前、輝羅の脳裏にまたもビジョンが見えた。

(まただ、・・・・・・・・・・・・・・回避したら、ビームライフルが来る!)

咄嗟に右手のビームサーベルで切り結び、真琴のビームライフルに備えた。
輝羅が見えた通り、真琴は右手のビームライフルを構えていた。
ビームライフルが発射される寸前に、輝羅はシールドを構え防いだ。

「うそっ!?」
「まだだー!」

防いだのを瞬時に確認してビームサーベルをずらして、マラサイの左肘から切り落とし隙を見て蹴り飛ばした。

「ああっ!」
「よし、今のうちに!」

相手が体勢を立て直す前に、輝羅はすぐに反転、アフラマズダに向かった。




アフラマズダに取り付いたハイザックはことごとく、周りの機関砲を落していた。

「10番砲座沈黙!」
「艦の損害率、35%!」
「7番通路にて火災が発生!」
「くっ、舞達はまだ戻らないのか?消火班急がせろ!」

ブリッジでは祐一の的確な指示がとんでいたが、いかんせん完全には追いついていない。

「!、クロスガンダムがこちらに向かっています。」
「やっときてくれたか、輝羅には甲板にいるハイザックを片付けるように伝えろ!」
「了解!」


「甲板のハイザック・・・・・・・・・あれか!」

輝羅は白い艦の上に立つ緑色の機体を捉えると、すぐさま向かっていく。

「やめろぉ!!」
「な、ガンダム!?」

輝羅は一度戻したビームサーベルを再び抜いて、一気に加速をかけた。
ロッシはビームライフルで反撃するが、輝羅はシールドですべて防いだ。

「だめだ、当たらない!」

ビームサーベルが振り下ろされる瞬間、ロッシはギリギリで飛び上がった。
輝羅も後を追うように飛び上がり、左手にアサルトナイフを取り出して、はいざっくのモノアイに突き刺した。

「しまった、カメラが!」
「とどめ!」

ビームライフルを構えてトリガーを引く。

ビームの閃光がハイザックを貫き、直後ハイザックは爆発と共に宇宙の塵となった。

「よし!」

「え・・・・・そんな・・・・・・ロッシが・・・・・・」

アフラマズダに近づいていた真琴は、ロッシの死を目の当たりにした。

「あ・・・・・そん・・・・・・・な・・・・・・」

仲間を失った、悲しみの他に真琴の内に別の感情が湧き上がってきた。

「・・・・ガンダム・・・・絶対に許さない・・・」




『輝羅、よくやった。』
「舞さん。」

少しして左腕の無い、舞のジムUが戻ってきた。

「大丈夫ですか?」
『はちみつくまさん。と言いたいけど撒いただけだからすぐに追ってくる』
「わかりました。今、手を貸します。」

輝羅はジムUをカタパルトまで送ると艦の後方に付いた。

『輝羅!』
「艦長。」
『舞の収容は確認した。逃走用の特殊な弾を使うが、装填まで少し時間がかかる。やれるか?』
「やりますよ。やらなきゃみんなここでお終いですから。」
『よく言った。落されるなよ!』

通信が切れると同時に敵警戒のアラームが鳴った。

「あいつらか。」

「おい、ロッシがいないぞ!」
『まさか落されたか?』
「なら敵討ちだ!!」

二機のハイザックはビームライフルを交互に撃ち出した。
輝羅はシールドで防御し、片方がマガジンを取り替える隙をビームライフルを撃った。
発射されたビームはたちまちハイザックの腕や頭部を撃ち落した。

「止めだ!!」

止めを刺そうとライフルの銃口を改めてハイザックに向ける。
瞬間、輝羅に戦慄が走った。

「何だ、この感じ!?」
「ガンダム!墜ちろ、墜ちろ―――!!!」

ビームライフルをがむしゃらに撃ちつつ突っ込んでくる。

「墜ちろ、墜ちろ―――!!」
「何だこいつ、さっきとはまるで気迫が違う!」

ふとエネルギー残量を見ると、すでに四分の一を切っていた。

(まずい。すぐに決着をつけないと!)

輝羅はライフルを捨て、ビームサーベルを抜いて構えた。
真琴も同じ様にライフルを捨てビームサーベルを抜く。

輝羅は振り下ろされたビームサーベルをシールドで受け止め、同時に自分のビームサーベルを振り上げマラサイの肩を切り落とした。

「なっ!?」
「これで、終わりだ!!」

一瞬の隙を突いて、輝羅はマラサイのコックピット目掛けて突きを放とうとした。
瞬間、一機のハイザックが体当たりを当ててきた。

「隊長を、やらせるか!!」
「うあっ!」

渾身の体当たりを食らいバランスが崩れたため、ビームサーベルはマラサイのコックピットを逸れて頭部を貫いた。

「っ、邪魔をするな!」

体当たりを食らわせてきたハイザックに向き直り、ビームサーベルを振り上げるが突如入ってきた通信により中断された。

『輝羅、これ以上の戦闘は無意味だ。特殊弾の装填も完了したし、逃げるぞ!』
「は、はい。了解しました。』

祐一からの通信が切れると輝羅はすぐアフラマズダに向かった。


アフラマズダ ブリッジ

「敵は行動不能だ。クロスを収容後特殊弾発射。同時にこの宙域を離脱する!」
「クロス、収容完了しました。」
「よし。特殊弾発射、機関最大、振り切れぇ!」

祐一の合図と同時に後方の砲身から一発の弾が発射された。
少ししてからまぶしい光が、先程発射された弾から発せられ、漆黒の宇宙を照らす。

「うわあっ!」
「何だ、これ!?」

真琴たちはあまりのまぶしさに目を開けていられなかった。

しばらく放射を続けていた光源体も除々に光を失っていき、完全に無くなったときにはすでにアフラマズダも肉眼では確認できない位、 遠くに行っていた。

「逃げられたか。」
「だめだ!ほとんどの計器がイカれちまってる。」

色々と計器をいじってみるが、どれも無意味に終わった。
そうこうしている間に、アレキサンドリアが接近し始めていた。

『全機、スラスターは生きてるハズだから自力で戻って来い。以上だ!』

「何だよ、こいつ。自分は見てるだけのくせしやっがて。」

艦長のぶっきらぼうな通信が切れると同時に、カシムが悪態をはいた。

『しょうがないだろ。じゃあ、俺は隊長を連れて帰るからな。』
「ちょっと待て、俺はどうすればいいんだよ!?」
『まだ左腕が残ってんだろ。それで掴まっていけ。』
「・・・・・・・・・・・・はあ、しゃーないっか。」
『・・・・・・ふう。いきますよ、隊長。』

ハリアの問いに真琴は答えなかった。

「?」

疑問に思ったハリアだがとりあえず今はアレキサンドリアへの帰路についた。















アフラマズダ 月到着まで後、約36時間・・・














機体解説


艦名:アフラマズダ
型式:アーガマ級強襲巡洋艦
武装:対空機関砲×14(1つの砲座に四つまで取り付けられている)
   メガ粒子砲×2門
   単装砲×3門
   ミサイル発射管
   破城陽電子砲「ゴッドブレス」

備考

強襲機動巡洋艦「アーガマ」の3番艦として開発された。
2番艦「ペガサスV」のプランも認められていたが、性能の高さからアフラマズダが優先され、
「KURATA財閥」の兵器開発・販売会社「HJ社」が完成させた。(ペガサスVの設計図はグリプス戦役中に連邦軍に秘密裏に譲渡された)
基本構造はアーガマと変化は無いが、艦首の単装砲が無く、変わりに破城陽電子砲が設置された。(設計者の趣味により、これだけ別名が与えられた)
搭載数は6機。







あとがきです。

やっと、やっと更新できました。

今回は輝羅VS真琴といった感じです。

次回はひとつの戦闘に、2話構成で考えています。

年内中には片方だけでも仕上げたいです。

いえ、仕上げます。

できれば、まっててください。



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